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危険区域責任負わずラトーヤ自伝第八章よりその11

インサイド・ザ・ジャクソン・ファミリー
(1991年9月10日)
原題「LA Toya: Growing Up in the Jackson Family」
著者 ラトーヤ・ジャクソン 訳 高橋伯夫


MICHAEL

第八章その11

所属する新しいレコード会社の社員ダニー・デービスは、彼がよく知っているフィル・スペクターに会うよう助言してくれた。


もちろん、あたしは1960年代初期におけるフィルの多くのミリオン・セラー・レコード、たとえば、ロネッツ・ライティアス、アイクとティナ・ターナー、クリスタルズなどのヒット・ナンバー、それに彼のユニークなシンフォニー風の〈ウォール・オブ・サンド〉スタイルを知っていた。


またフィルは、ビートルズの〈レット・イット・ビー〉、1970年代のジョージ・ハリソンとジョン・レノンのアルバムなどもプロデュースした。しかし全盛期のあと、フィルはジョンの未亡人のヨーコ・オノ、パック・グループのラモンズ、その他に1つないし2つのグループのレコーディングを手がけただけであった。

phil s

フィルの好みは確かに偏っていないように思われ、また伝説的人物と言われるほどの人だったので、あたしは彼に会うのを楽しみにしていた。


ダニーとあたしが、車でハリウッドヒルズのサンセット大通りのはずれにあるフィルの家に向かう途中、「このプロデューサーを、ちょっと変わっているという人もいますがね、そう……」とダニーは話していた。そして、「しかし、あなたとフィルはきっとうまくいくはずです」彼はあたしを安心させた。確かに車が環状道路へ入って行くまで、あたしは何も不安は感じなかった。


スピード・バンプ(スピードをダウンさせる段)の上を飛び上がりながら、あたしたちはいくつかの警告標識を見た。それは、フェンスに電流が流れており、屋敷内には攻撃用の犬と武装した警備員がいることを警告するものだった。


あたしの目に入った標識の1つには、“危険区域・責任は負いません”と書かれていた。


フィルの邸宅は堂々としたイタリア式の建物で、ホラー映画のセットにもなりそうであった。背の高い、無表情の使用人があたしたちを迎えた。この使用人はごろつきのような男だったので、それにふさわしい名のラーチと呼ぼう。


入口を入って行くと、まるで違う時代に入ったようであった。まだ日が沈む前の夕方早かったのにもかかわらず、家の内部は薄気味悪いほど暗く、ろうそくだけが灯されているように見えた。


室内の装飾は古色蒼然とした、いかにもヨーロッパ風のもので、無数のぎらぎら光るシャンデリア、表面が大理石のテーブル、何だか埃っぽいサテンとベルベットの長椅子、金箔をかぶせた木背の表紙がついた古書、そして高さが6メートル以上もある天井からは、重厚なベルベットのカーテンがかかって、フラシ天(注※ビロードの一種)のじゅうたんまで重々しく届いていた。


まるで何年も人が足を踏み入れたことがないように、あるものすべてがかび臭かった。どこからともなく陰気な音楽が流れ、それにラーチのおどろおどろしい感じが気味悪さをさらに深めていた。


ダニーとあたしは30分ほど居間で待っていた。フィルは、あたしたちに会うために本当に下に降りて来るのだろうか、とあたしは思った。ダニーはラーチが運んで来たチーズとフルーツを、皿からつまんで食べていた。


やっとフィルが現れたとき、彼はその邸宅と同様、時代錯誤のような格好をしていた。黒いキューバン・ヒールのビートル・ブーツとラッパ・ズボンを履き、髪は長く伸ばしたプリンス・バリアント・ヘアーカットであった。
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をを、怖い!ラトーヤ、……このぞっとする屋敷にいったい何があるんだろう?そしてフィルとはどんな人物なんだろうか?彼女の観察力もすごい
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ラトーヤ自伝第八章その12へ続く


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変態のぞき穴ラトーヤ自伝第八章よりその12

インサイド・ザ・ジャクソン・ファミリー
(1991年9月10日)
原題「LA Toya: Growing Up in the Jackson Family」
著者 ラトーヤ・ジャクソン 訳 高橋伯夫



第八章その12

やっとフィルが現れたとき、彼はその邸宅と同様、時代錯誤のような格好をしていた。黒いキューバン・ヒールのビートル・ブーツとラッパ・ズボンを履き、髪は長く伸ばしたプリンス・バリアント・ヘアーカットであった。


彼は1986年ではなく1966年の時代に生きているようであり、40代半ばではなく、自分をまだティーンエイジャーのように思っているようだった。

phil specter2


この訪問中、フィルはずっとあたしから目を離さなかった。彼は、あたしのレコードのための曲を作っていると自慢した。


「あなたの頭に浮かんだ曲を、是非お聞かせいただきたいものですね」と言って、あたしは黒いコンサート・ブランドピアノに向けてジェスチャーを示した。「それとも何か弾いていただけるかしら」


「いや、だめだ!」とフィルは神経質そうに答えたあと、すぐに落ち着いた。「もう1度お会いしましょう。いろいろとアイディアがありましてね」


「はい、わかりました」とあたしは返事しながら、彼は恥ずかしがり屋なのかもしれないと思った。ダニーと一緒に帰る途中、あたしはいくつかの条件をつけた。


「ダニー、正直言って、フィルは少し変人だと思ったわ」ダニーはまた心配しないようにと言い、あのプロデューサーは確かに風変わりだが、危険な人ではない、と話した。「オーケー、ダニー、あなたがそうおっしゃるなら…」

phil specter-1

翌日、フィルはあたしの家に電話してきた。
「よく聞いてください。ラトーヤ」と真剣な調子で言った。「私はあなたと2人だけで仕事をしたいんだ。レコード会社からは誰にもついてきて欲しくない。あなたとわたし、2人だけでやるのだ。そうすれば、かなり仕事もはかどるしね」



その日、薄暗くなってから、あたしは1人、車で彼の家に向かった。ドアのところでラーチが迎え、居間に案内してくれた。サテンの長椅子に座ったところ、前日に出されたチーズとフルーツが冷蔵庫に入れられず、しなびた状態でそのまま同じテーブルに置かれてあるのに気づいた。



うっ!吐きそうだわ。ラーチが居間から出て行き、ドアを閉めたあと、カチャッと鍵のかかる音がした。それから1時間半の間、ラーチは何度も居間に戻り、「バスルームをお使いになりませんか?」と丁寧に尋ねた。


なんておかしな質問だろう、とあたしは思った。「いいえ、結構です」フィルのバスルームにはのぞき穴があり、そこからフィルは客の様子をうかがっていたことを、あとで知った。


「何か食べ物あるいはお飲み物はいかがでしょうか」
「いいえ、ありがとう」あたしは、だだっ広い部屋の中をぶらぶら歩きながら、家具調度に感嘆したり、何冊か古い本をめくってみたりした。ペーパーバックの1冊は、フィルに関するものであった。


フィルが決まって、訪問者を家に閉じ込め、銃で脅すことなどが書かれているページを、あたしは不安な気持ちで読んでいった。読みながら、誰かがあたしをスパイしているのではないかと感じだ。


でも、いったいどうしてそんなことが……。あたしはたった1人なのだ。ふと、壁にかかっていたポートレートの1つを見上げると、目の位置に穴が開いているのに気づいた。
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え?1人でフィルの家にきてしまって…ラトーヤそれはやばいんじゃないの…
のぞき穴って…なんで来客をのぞくんだろう?

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ラトーヤ自伝第八章その13へ続く


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ベーツモーテルへのお誘いラトーヤ自伝第八章よりその13

インサイド・ザ・ジャクソン・ファミリー
(1991年9月10日)
原題「LA Toya: Growing Up in the Jackson Family」
著者 ラトーヤ・ジャクソン 訳 高橋伯夫


MICHAEL

第八章その13


でも、いったいどうしてそんなことが……。あたしはたった1人なのだ。ふと、壁にかかっていたポートレートの1つを見上げると、目の位置に穴が開いているのに気づいた。

再びラーチが戻ってきた。「おやまあ、大分遅くなってしまったわね。フィルが降りていらっしゃることは確かなの?そろそろ始めなければならないのに」


それから数分経って、フィルが部屋の中にするっと入ってきた。無言のまま、ソファーそっと近寄り、落ち着かなさそうにあたしのすぐ横に座った。


あたしをじっと見つめながら、「べーツ・モーテルに行かないか?」と尋ねた。
「何ですって?もちろん行きませんわ」と笑いながら答えた。



有難いことに、あたしはアルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』を観ていなかった。従って、べーツ・モーテルがどんな所であるか全く知らなかった。
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psychd.jpg
(映画サイコのひとコマ)

あたしは、彼が冗談を言っているのだとばかり思った「仕事をするためにここにきたんですよ、フィル」とあたしは先制のパンチを放った。「ですから、べーツ・モーテルになんか行きたくありませんよ」


フィルは笑っていなかった。笑みさえ浮かべていなかった。まるで息もしていないように思われた。


「君をべーツ・モーテルに連れていきたい。わたしは鍵を持っている。ルーム・ナンバー・ワンの鍵だ。わたしはべーツ・モーテルの個人用の鍵を持っているのだ」


彼はモーテルの部屋の鍵を持ち上げて見せ、あたしは唇を固く閉じたまま微笑したものの、これは冗談ではない、と思った。彼はハッキリとあたしを怖がらせようとしていた。しかも、まるで仕事みたいにやっていた。


「どうしたんだ?」とフィルはじれったそうに尋ねた。


「サイコを観たことがないのか?」


「ええ、観ていません」


あたしは立ち上がってピアノの方に歩きだした。フィルもついてきた。たちまち、人間が変わり、あたしの手に譜面を突き出して「歌え」と命じながら、聞いたこともない不協和音のメロディーを弾いた。


「でも、フィル、どんな曲か知らないんですが…」
「歌え!」


そこで、あたしは、思い浮かんだメロディーで適当に歌った。


その間、フィルは調子をとるために足を踏みならし、大声でわめいた。
「2人でいい仕事ができるよ。われわれはこれまでで、最高のチームになれる。いまいましいきみの兄弟のマイケルなんてつまらない。彼には才能がない。マイケルに見せつけてやる。彼がしてきたことは全部くだらないさ!」


彼の気違いじみた長い攻撃的な演説に、あたしは歌をやめて、信じられないように彼を見つめた。「君の弟、あの青二才、あいつなんかつまらない。詰まらん奴だ。君、そこに座りたまえ!」


彼は無理にあたしを彼のピアノ・ベンチの横に座らせた。フィルはわけのわからないメロディーで、ポロン、ポロンと弾き始めた。


そして突然飛び上がって絶叫した。


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フィル・スペンサー怖すぎ~~~~
ラトーヤってやはり、もてるからこんなことばっかりなの?

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ラトーヤ自伝第八章その14へ続く

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フィルの毒牙に絶体絶命ラトーヤ自伝第八章よりその14

インサイド・ザ・ジャクソン・ファミリー
(1991年9月10日)
原題「LA Toya: Growing Up in the Jackson Family」
著者 ラトーヤ・ジャクソン 訳 高橋伯夫


MICHAEL

第八章その14


彼は無理にあたしを彼のピアノ・ベンチの横に座らせた。フィルはわけのわからないメロディーで、ポロン、ポロンと弾き始めた。そして突然飛び上がって絶叫した。


「きみが嫌になった!うんざりした。マイケルも嫌になった!」彼はドアの所へ走って行き、バタンと閉めて、ロックした。


フィルの毒牙に絶体絶命ラトーヤ自伝第八章よりその14

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べーツ・モーテルから逃げおおせるラトーヤ自伝第八章よりその15

インサイド・ザ・ジャクソン・ファミリー
(1991年9月10日)
原題「LA Toya: Growing Up in the Jackson Family」
著者 ラトーヤ・ジャクソン 訳 高橋伯夫

(前頁より)
「約束してくれるね」と彼は少年のように聞いた。「絶対に戻ると約束してくれるね」「もちろん約束します」やっとフィルの気がおさまり、しぶしぶとラーチにあたしを行かせるように命じた。


第八章その15


あたしは何げない振りをして、ぶらぶらとドアの外に出た。しかし、ひとたび彼らから離れると、あたしは一目散に逃げた。どうか神様、車の中にキーがありますようにと念じた。


運よく鍵があり、あたしは急いで車の中に飛び込み、ドアをロックし、エンジンをかけた。後ろを振り返ると、フィルが戸口に立っており、あたしに戻るように手招きをした。


次いで、ラーチに大声で「彼女をつかまえろ!つかまえるんだ!門を閉めろ、彼女を出て行かせるな!」と叫んだ。


あたしはペダルを踏んでスピードをあげ、ちょうど閉まる前に鉄の門をくぐり抜けた。そのあと、慎重に狭い道を下っていった。


あたしはがたがた震えながら運転し、ランディの元ガールフレンドの家に行ったが、ジュリーは留守だった。さて、どうしようか。  今度はジャックの家に行ったが、同じく留守だった。


エンシノに帰るにはひどく取り乱していたため、しばらく同じ場所をぐるぐる車で回っていた。再びジャックの家の前を通ると、明りがついていた。彼がドアの所で返事をすると、あたしは玄関の広間でへなへなとくずれた。


「いったいどうしたんですか?」とジャックは当惑して尋ねた。
「お願い、助けて」とあたしは息を切らした。「助けて!」
「何、何が起きたんですか、ラトーヤ」


「フィルよ、フィル・スペクター」

ジャックは、「もう、言わなくてもいい」といった表情をした。「ご両親に電話をかけて、大丈夫だと知らせてあげなさい。後は万事オーケーだから」


彼は、エンシノにダイヤルして、あたしに受話器を渡した。「あたしのことは心配しないで、大丈夫だから」そう言うのが精いっぱいだった。


あたしがフィルの家から逃げ出したとたん、フィルがあたしの両親を電話で脅迫したことは全く知らなかった。彼は父に、「彼女をそこでかくまっているんだろう。わたしのところへ帰さないつもりだろう!彼女は戻ると約束したんだ。今から、そっちへ出かけて、お前の頭をピストルで撃ち抜いてやるから!」と絶叫した。


ジョーゼフについて一言言えるのは、誰も彼を脅すことができなかったことである。「やれるならやってみろ」とジョーゼフは威嚇した。「オレがそっちに行って、きさまの頭を撃ち抜いてやるんだから!」


「そうかい、それならオレはマグナム銃で待っているからな!来れるものなら来てみろ!」


その夜遅くなってから知ったことだが、そんなやり取りの最中に、あたしの電話が自宅に入ったのだ。だから、当然のことながら両親はフィルがあたしを人質にして、あたしに大丈夫だと言わせたのだと思ったのである。


両親はあたしの電話のあと、すぐに心配し始めた。というのは、あたしがまだフィルの家におり、フィルはあたしに話しかけているようなふりをしたからである。父は警察を呼ぶ、とわめいた。本当に大混乱だった。


気を持ち直したあと、あたしは自分で車を運転して家に帰った。玄関の中に入り、重い足取りで階段を上がって自分の部屋に行くと、母、ジョーゼフ、マイケルそれにジャネットが集まって心配していた。


その奇怪な夜の出来事を一部始終話すと、映画今日のマイケルはこう言った。
「ラトーヤ〈サイコ〉の中のべーツ・モーテルってなにか知らないの?人が殺される場所だよ」


「そして、絵の中の目がくり抜かれていた点だけど…」と、ジャネットはすぐに気がついたように話した。「あの映画の中でも、のぞき穴があったわよ」


わざわざ〈サイコ〉なんか観る必要はありません。あたしはたった1人で、あの恐い2,3時間に耐えたのだ。悪夢はとっくに過ぎ去ったのに、それからしばらくの間、後遺症が残った。


次の、1,2か月の間、あたしは1人で家にいることができず、明りをつけてジャネットといっしょでない限り、自分の部屋で寝ることもできなかった。


家の中で安全にいられることのありがたさを、しみじみと考えたあの頃のことは、いつまでも忘れないだろう。

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ジョーゼフ父、子供の言い合いみたいですがすごい勝つ気満々で<(_ _)>
べーツ・モーテルばりのフィル・スペンサー家であるじは何をしたかったのかしら?

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ラトーヤ自伝第九章その1へ続く

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